わが国の学校体育のメモリアル! 学体連「デジタル資料館」開設にあたって

                               会長 友 添 秀 則

 この度、学体連では「デジタル資料館」を開設し、これまで本会に保存されてきたわが国の学校体育に関する史資料をデジタル化して、広く皆様に公開致します。

 学体連は、第二次世界大戦直後からわが国の学校体育の歴史と共に歩んで参りました。終戦後、戦災により焦土と化したわが国では、大人以上に子供の心身の深刻な状況が大きな社会問題となりました。衛生環境や食料事情もままならない中、多くの子供が栄養失調に悩まされ、体力は大きく低下し、気力も乏しい厳しい状況にありました。このような状況を眼前にして、1947(昭和22)年5月には、後に本会初代会長となる大谷武一や第4代会長となった今村嘉雄らは、当時の文部省と連携して全国の学校体育指導者を結集し、本会の前身となる日本体育指導者連盟を設立しています。

 記録によれば、授業用の体育用品、教員と子供用の体育着などの全国の学校への配給に加えて、早くも1948(昭和23)年の夏(7月~8月)には、東京都、大阪府の他にも、岩手、三重、島根の各県で学校体育講習会を開いています。また、翌年には文部省と共催で、「学校体育指導要綱(当時の体育版学習指導要領)」に基づいた小・中・高校の体育教材講習会を東京で開催しています。当時は、「体育図書館建設」や図書刊行も計画されておりました。

 残念ながら、図書館建設は実現しませんでしたが、1949(昭和24)年には、教育書の大手版元の金子書房から、最初の日本体育指導者連盟の編集になる「学校体育指導要綱」に掲載された各種目の解説集が刊行されています。これらを基に、それ以降も全国で研究会が開催され、多くの実践記録や研究発表資料が作られています。ちなみに、体育学における各専門領域の専門書刊行を含めて、日本体育指導者連盟編の著書は膨大な数に上ります。

 1962(昭和37年)3月には日本体育指導者連盟は改組され、現在の学体連が創設されますが、同年11月には第1回全国学校体育研究大会が開催されています。今年の2022年度には第61回大会を迎えます。学体連には、毎年、各都道府県が交互に大会を主管し取り組んだ、大会ごとの研究成果が研究紀要や報告書として集積され、保存されています。また本会のこれまでの機関誌に掲載された原稿、全国学校体育研究最優秀校(文部科学大臣賞)・全国学校体育研究優良校・体育授業優秀教員に関する表彰関連研究成果や諸資料、動画やデジタル資料も保存されています。さらに、日本体育指導者連盟時代には専門誌の『新体育(新体育社発行)』誌、学体連となって以降には『学校体育(日本体育社発行)』誌の編集を行っていた時期もあります。これら専門誌の原稿も含んで、デジタル資料館では、今後、保存され集積された史資料を逐次公開して参りたいと考えております。

 学体連の歴史はわが国の学校体育の歴史そのものであり、本会に蓄積され保存されてきた史資料はわが国の学校体育そのものを物語る貴重な財産でもあります。さらに、戦後から現代に至る教育や学校、折々の社会や世相の歴史の証言でもあると考えています。これらの史資料を皆様が自由に閲覧され、お役立ていただくことができれば、本会にとって望外の喜びです。

◆学体連デジタル資料館の目的

  ■学体連の保有する紙媒体資料をデジタル化し、後世に向け、保存していく。
  ■全国の教職員とその関係者にデジタル資料を提供し、「学校体育・運動の遊びなど」の
   実践と理論に向けた研究を支援していく


学体連デジタル資料館の主な項目は下記に掲載しています。
各項目をクリックしますと、関係資料にリンクしています。

全国大会研究紀要デジタル化された全国学校体育研究大会の研究紀要の提供
全国大会報告書デジタル化された全国学校体育研究大会の大会報告書の提供
学校体育研究学体連に所蔵されている雑誌「学校体育研究」のデジタル化
された資料の提供
全国学校体育研究資料集全国学校体育研究優良校等・体育授業優秀教員に関する
デジタル化された資料
  
会報創刊号から今日までの会報のデジタル化された資料の提供
  
メルマガ「学体連ニュース」創刊号から今日までの「学体連ニュース」を掲載
  
各都道府県学体連関係 
  
各都道府県教育委員会・教育センター等関係各都道府県の研究実践記録が参照できます。
  
学体連関係 過去著作資料

■戦後の学校体育に関するデジタル資料を通し
て戦後学校体育の成立過程等に関する 情報提供

■文部省・学体連会長の主張を通して、学校体育に関する考え
の変遷に関する情報提供

  
  
児島JES